千葉県鴨川市 大本山小湊誕生寺 公式サイト

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32.八大龍王の碑

32.八大龍王の碑

祖師堂左手の通路を龍王堂へ向かうと、お堂の左手前に大きな石碑が建てられています。碑面には、草書体(くずし字)で「八大龍王」の文字が、はみ出さんばかりに躍動しています。この石碑は、台石とともに自然石を使用し、菱形の角を切り取ったような形で、台石を含めた高さは3メートル10センチ、幅は1メートル55センチ、厚みも60センチ以上あります。

八大龍王は、天龍八部衆の一つである龍族の八王のことで、難陀(なんだ)龍王・跋難陀(ばつなんだ)龍王・娑伽羅(しゃから)龍王・和修吉(わしゅきつ)龍王・徳叉迦(とくしゃか)龍王・阿那婆達多(あなばだった)龍王・魔那斯(まなし)龍王・優鉢羅(うはつら)龍王をいい、法華経の守護神です。龍王堂は、この八大龍王をお祀りするお堂です。

さて、碑の裏面を見ると、「大正十年四月二十五日石渡日昌尊者カネ」と刻まれ、さらに「昭和十三戊寅歳四月八日小湊山准六十九世本正院日崇」とあります。この銘文から、碑の文字は日崇上人の揮毫になるもので、昭和13年に造立されたことがわかります。小湊山准六十九世の日崇上人とは、現在の誕生寺貫首の歴代譜では七十三世加歴(持別の功績によって貫首の歴代に加えること)である東京都渋谷区妙円寺二十五世の本間慈厚上人のことです。造立の施主は、はじめに刻まれた石渡日昌・カネの二人でありましょうが、詳しいことはわかりませんでした。大正10年(1921)という年号も何であるのか不明でした。

ところが、日蓮聖人のご両親のお墓をお護りする妙蓮寺の御山主上村貞良上人のお話しによって、石渡カネさんについて明らかになりました。石渡カネさんは福井県敦賀の方で、宝暦8年(1758)に焼失した誕生寺の祖師堂が天保3年(1832)から十余年間の歳月をかけて再建されたとき、大瓦を一手に奉納された方の子孫であるということです。

さらに、龍王堂のご本尊として安置される八大龍王の尊像を昭和14年6月に奉納されたのも、石渡カネさんであることがわかりました。一緒に記されていた日昌とは、石渡昌吉という方で、大正10年はこの方の命日であることも判明しました。尊者とあるところから、信仰心篤く在俗で修行を積まれた方でしょう。

八大龍王は水に関係が深く、大祭の日には海上安全や大漁満足を祈る檀信徒の参詣でお堂がいっぱいになります。龍女成仏が説かれるところから、女性の守護神としても篤く信仰されています。